難易度:中程度、要はんだごて、部品類。
警告:この作業を行うと、メーカーサポートを受けられなくなります。実施は個人の責任においてお願いします。
WARNING : PLEASE OWN YOUR RISK.
2005年01月02日 新設。
2005年06月14日 回路図へのリンクを修正。
2005年08月20日 レイアウト変更。
発端は友人宅で手伝い&打ち合わせをしていた時でした。彼はゲーム制作者さんです。集中力を高めて作業をするために、家中まるごと極力静音化を計っています。ザルマンの水冷タワーすら買ってきた漢です。また、モニタもゲーム制作者にとっては命ですので、でかくて使いでのあるものをということで、ソニーのディスプレイ「SDP-P232W/B」を購入しておりました。
(注)まわりに写っている物品は、プライバシー保護の観点からモザイクをかけさせていただきました。
しかし、このモニタ、背面に空冷ファンが付いているのです。しかも、背面パネルをどう見ても、排熱の役には立っていなさそうで「とりあえず付けた感」が漂っています。さらに恐ろしいことに、このファン、取り外すとモニタの電源が落ちてしまうのです。つまり、ファンが故障したら、オーバーヒートを避けるために電源が自動的に落ちる仕組みになっているようです。ファンを静音品に交換しようにも、ファンのコネクタが市販品ではありません。仕方がないので、背面パネルを外して、ファンを小さいタッパーに閉じこめるという荒技で、とりあえず静音化を達成していました。
で持ちかけられた相談が、「ファンを監視している回路があるのなら、その回路にあたかもファンのふりをした信号を突っ込んでやれないか」というものでした。
普通のPCでも、CPUクーラーファンやケースファンに回転数モニタ機能が付いているのは、ちょっとPCに詳しい人なら常識だと思います。普通の回転数センサ付きDCファンは、一回転する毎に2パルス出ています。ファンには感熱式で回転数を変えるものもありますから、1秒当たりのパルスをカウントして÷2すればHzつまり回転数が出る訳ですね。ということは、適当な低クロックを分周して突っ込んでやれば、ファンのふりができることになります。
最初、手持ちのクロックをいろいろと探してみましたが、最低でも8MHzしかありません。キンセキの分周器付きクロックも16MHzのものです。セイコーの音叉形クロックで32kHzのものが1個だけ転がっていましたが、発振回路を作るのが面倒です。こういうときはNE555の出番です。こいつは時限爆弾を作りたいとき長期タイマーを作りたい時から短期までパルスを出してくれる大変便利なチップで、データシートをダウンロードすると分かりますが、相当色々な用途に使えます。これをクロック発生器にしてみました。
仕方ないので、周波数はテスタで計りました。もともとのファンは低回転数(うかつにも記録が手元に残っていないのですが)だったので、そんなに高クロックは要りません。ちょうどトラ技2004年1月号116ページに非安定マルチバイブレータの回路図が載っていましたので、この際デューティー比は気にせず、これをそのまま組み立ててみることにします。式の単位がよくわからんけど1,960Hzぐらい出るの? 回転数の電圧も、パルスのところで3.6Vほどを示していましたので、おそらく5Vぐらいのパルスが出ているだろうと勝手に判断しました。パルスをそのままデジタルテスタのDCレンジで計った訳ですから、TTLレベルということはないでしょう。
2005年1月2日 4:17:35訂正 1,960kHzぐらい→1,960Hzぐらい
左側が、某社で派遣として働いていた時に私物として買ったテスターで、クロックはおろか温度まで測れるサンワの製品(ただしRSなど外部出力端子なし)です。右側は、RSコンポーネンツ日本法人が出来るか出来ないかぐらいの時に買ったFLUKEのテスタです。この他にシンクロスコープとロジックアナライザがあります。
この出力クロックを、カウンタ161の2連結で分周してみます。バイナリカウンタは、その波形をよく見てみると、A、B、C、Dと経るに従って、最初のクロックの半分の周波数、また半分……というふうに見えます。これを分周器として利用する訳です。
どれくらい分周すれば良いか、加減が分からない上に、現場が離れていた(当時阿佐ヶ谷、うちは西日暮里)ので、シンクロスコープを持ち込んでの波形観測ができません。仕方がないので、丸ピンソケットを使った自由配線ができる仕組みを作ってみました。超昔の手動電話交換機を思い出してください。あんな感じです。
画像が細かくて分かりにくいと思いますが、2本が電源で1本がクロックアウトです。電源は実測で9.3V出ていましたので、7805で5Vに落としています。そして左上のNE555でクロックを作っています。できたクロックを、右の161×2個で分周しています。QA〜QDのすぐ横に白い丸ピンソケットが4ピンずつ並んでいます。さらにもう一個161を植えられるスペースまで確保していましたが、これは不要でした。
回路図はこちら(png版、pdf版)。一回手書きのものを紛失して、元資料と、作った回路図を照合しながらCADで引き直したものですので、もちろん一切無保証です。参考までにどうぞ。(注意)回路図にはAC161とありますが、HC161でも動きますし、AC163でもHC163でも問題ありません。TP1がVcc、TP2がGND、TP3が回転数出力です。
さて実際に装着します。
コネクタは写真の方向から見て、左からVcc、回転数、GNDだったと思いますが、保証しませんので必ず実測して下さい。このコネクタ(というかレセプタクル)に合うコネクタが見つかりませんでしたので、ピンヘッダだけ買ってきて、セロテープで絶縁してあります。超現場合わせです。いざ火を入れてみたところ、適当につないだ(161の2個目のQB)にも関わらず、そのままさっくり動いてしまいました。このまま数ヶ月常用してもらっていますが、今のところ何の不具合もないそうです。写真を見ると分かりますが、放熱穴がたくさん空いているので、背面パネルさえ付けなければ、ファンは特に不要のようです。
「静音化の時にファンまでいらないけど、回転数を検知されていて困る」、という特殊な困り方をされている方は、ぜひ試されてみてはいかがでしょうか。